題:あんなに簡単に描いていた夢を、今はもう、見ることさえできない
「…そういえば最近、夢見ないな」
いや、夢は見ている。
いつだって兄が私のことを責めて来る夢を見ている。
兄は私を恨んだまま死んでいったんだろうか。
それとも、私を恨んでいるのは私なのだろうか。
私は…どうなんだろうな。
「中学くらいまでは小さい頃の夢とか見た気がするけど」
高校に入ってからぱったりと見なくなった。
昔はお花屋さんになりたいとか、アイドルになりたいとか、本当に色々と夢にしていた。
幼稚園かどっかで書いた将来の夢は多過ぎて悩んだような気がする。
それがどうしてこんなに捻くれちゃったんだろうな。
思い出せない…というか思い出したくない。
どこか心のどこかで現実を否定したいと思っているんだろうな。
「…アホくさ」
顔洗ってついでに頭冷やそ。
どうせ思い出補正ってやつだし、昔のことを思い出したって芋づる式に嫌なことがずるずる出てくるだけだ。
それで夢見が今より悪くなるのは御免被りたい。
見えてる地雷は踏むもんじゃない。
「…」
それでも夢を見たいと心のどこかで思ってしまうのは致し方ないことだろう。
あぁもう、くよくよすんの嫌だなぁ。
一人暮らしで不安になってるのかもしれない。
慣れればまた高校の時みたいになるだろうけど、それまでが長いような気もする。
実家には頼りたくないし、何より遠いし…。
こういう時に拠り所が少ないっていうのは困りものだ。
それでも慣れていかなきゃいけないし、こうしないと生きていけないんだけどさ。
「…買い物いこ」
−夢を見るのは、もう少し先のお話。