題:きみとの距離が近すぎるから、恋したり愛したり出来なくて
「なんかさー、二人って恋人っていうより双子みたいだよね」
友人の何気ない言葉。
その言葉がいやに引っかかった。
「そんなことないけど」
絞り出した答えは自分が思ったより強い言葉になった。
「そう?」
「うん」
あぁ、良かった。
相手を驚かせはしなかったみたいだ。
恋人っぽくない、なんて言われ慣れてしまった。
そもそもこれは恋でも愛でもなく、惰性なんじゃないかっていつからか思うようになった。
それ程までに近いのだ。
体格とか学力だけじゃなく、価値観も、怒りの沸点も近い。
まるで鏡の向こうの自分を相手にしてるんじゃないかと錯覚することすらある。
根本的な違いとして、性別が違うから別人だと思えるし恋愛関係を続けているんだけれども。
「なんていうかさー、恋人っぽいことをしてるイメージが湧かないんだよねぇ」
そりゃ人前でするのは恥ずかしいですし。
「一緒にいると思ってたけど最近はいないし」
「そりゃコース違うし…」
「冷めたの?」
「冷めてないよ」
休み時間中ずっとこれが続くのだろうか。
早くチャイムが鳴ることを願いながら適当な返事を探し続ける。
「ずばり、先名くんのこと、どう思ってるの?」
「どう、って…彼氏だと思ってるけど…」
「そうじゃなくて!好きとかそういうの!」
「彼氏なんだから好きでしょ…」
多分、恋愛感情からは少し離れてる好きだけど、という言葉は胸の奥にしまい込んだ。
燃え上がるような感情が恋だの愛だの言うなら、これはきっと違う感情なんだ。