飾る夏

題:ひまわり


ひょんなことから小さな向日葵の置物をもらった。

ただ、飾る場所はないので扱いに困っているのだが。

「どうしたもんかなぁ」

可愛いし折角だからどこかに飾っておきたいんだけど、あいにく部屋にそんなスペースはない。

机の上に置いてもいいけど多分邪魔になるんだよなぁ…。

「貰い物を他の人に渡すのもね」

なんでこうも絶妙に使いづらいものをくれたんだ。

でも可愛い。

試作品だと言っていたけど、これじゃ売り物にならないんだろうか。

…プロだからその辺の心構えは違うか。

「窓際に置く…?でもカーテンがなぁ」

どうしよう。このままじゃトイレの芳香剤のお隣さんになってしまう。

それは個人的に嫌だ。

かと言ってしまいっぱなしももったいないような。

「…模様替えしよ」

結局、なんとかして飾りたいんだよね。

 

 *

 

「あー!腰いった!」

重たいものを一人で動かしてはいけない。

当然のことながら、一人暮らしには如何せん難しい問題だった。

「休憩…って言っても場所ないな」

本棚を動かすのに中身を全部出したせいで座る場所がなくなってしまった。

こんなに本持ってたんだなぁ。

最近あんまり読んでない気がする。

「さーて…、と」

本を戻そうと意気込んだ矢先にインターホンが鳴った。

「誰だよこんな時に…」

荷物が届く予定もないし、宗教の勧誘か何かだろうか。

…居留守使っていいか。

なんてことを考えていたら携帯に電話が掛かってきた。

「はい」

『開けて』

ちょっと笑いながら言うその声は、家に居るのがわかっているようだった。

「…何の用ですか」

今日は特に用事がない。

突然部屋の模様替えをするくらい予定はなかったので、来た理由がわからない。

「無理に重い物動かして腰痛めてそうだなって」

「なんでそれを知ってるんですか」

今日はSNSに何も書いてない。

書いてない…はず。

「由紀さんと今朝会ったんだよ」

「話聞いてたら知心のことだし置物をどこに置くか悩んだ挙句模様替え始めそうだったし」

行動がバレバレなのは何か恥ずかしいな。

「もし違っても遊べたらいいなーくらいの気持ちで来た」

バイト帰りなのだろうか。

本当にいきなり来るものだから、どうでもいいことばかり考えてしまう。

「どうも模様替えで当たりみたいだけど、手伝う?」

「…お願いします」

もう重い物は粗方動かし終わってるんだけども。

 

 *

 

「なるほどなあ」

足場のない部屋を見てそう言ったきり無言になってしまった。

物が多い自覚はある。

「仕舞う場所決まってる?」

「何となくなら決まってる」

「それ教えてくれれば仕舞うから座ってて」

どこにだよ。

いや座る場所を無くしてるのは私なんだけど。

「私だけ座ってるのは落ち着かない…」

「じゃあそれの置き場所考えてて」

あーもうこれ聞いてくれないやつだ。

そういうパターンだ。

「はーい」

 

 *

 

「片付いたね」

「ありがとうございました…」

趣味とか色々バレた気はする。

見られて困る物がある訳じゃないけどなんだか恥ずかしかった。

「結局、そこに置いたんだ」

「あー、うん」

写真の横。

何となくここに置いてしまった。

「良いんじゃない」