題:オルゴール
「うっわ懐かしい」
模様替えも兼ねて部屋の掃除でも、と始めてから三時間ほど経っただろうか。
少し古ぼけた箱が出てきた。
引越しの時に入れたか覚えていなくて、中身も当然ながら忘れてしまった。
いざ開けてみると音色が流れ始めたのだ。
「いつのだろう」
幼稚園か小学校低学年くらいの時に作ったものだったと思う。
作った…と言っても回る所に絵を描いただけだが。
あの頃は無邪気だったなぁ。
色んなことに楽しみながら挑戦していた気がする。
中途半端に回っていたせいで止まってしまったオルゴールを巻き直す。
流れる童謡を聞きながら当時を思い馳せる。
…余り覚えてないので意味はなさそうだが。
あの頃の友人達は今はどうしているんだろう。
連絡先も知らない関係だったとしても、子供の頃は誰とでも仲良くなれた。
警戒心がないと言ってしまえばそれまでだが、当時はそんな言葉も知らなかった。
日が暮れるまで遊んで、門限を過ぎて怒られたこともあった。
冒険だ、なんて言って普段は行かない所まで行って迷子になって泣いて家族に電話をかけたこともあった。
この年になると門限はないし、迷っても携帯で調べて勝手に帰る。
嫌な思い出が多いが、あの頃は幸せを日常的に感じていた。
あの頃に戻りたいと、少し思った。