ちょことはぐ。

題:チョコレート


「くどそう」

私の手元のチョコレートを見ながら呟く。

「そうでもないけど」

と言っても、世間では甘いなんて可愛いものじゃないくらい甘ったるくてくどいと悪評高いものだ。

確かに他のチョコレートよりは甘さが目立つが、私にはそこまで辛く感じない。

「甘党にはそうなのかもね」

隣でブラックの缶コーヒーを開ける。

「いつもチョコレート食べてんじゃん」

そういう優はいつもコーヒー飲んでる気がするが、言わないでおこう。

チョコレート嫌いの優からすると、常にチョコレートを持ち歩いていることが理解し難いのかもしれない。

私からすると毎日そんな苦いコーヒーを飲んでる優のことが理解し難いのだけど。

「お腹ゆるくなるよ」

「そうなの?」

聞いたことあるような、ないような。

鼻血が出るというのはよく聞く話だけど。

「知り合いにそういうやつがいたし、調べたら出てきた」

そんな経験あったかな、と思い返してみる。

あ、ダメだ。

基本的に毎日食べてるから食べてない時がどうなのかわかんない。

「あとストレス溜まってると無性に食べたくなるんだってさ」

食べないと落ち着かないのはそういうことなのだろうか。

いつだったか幸福感がどうとか見たような…。

「発散はしてるんだけどね」

散らしてもすぐにもやもやしちゃうから意味が無いだけで。

「ふーん」

これは信じてないな。

「そういえば」

いつの間にか缶は机に置かれていた。

扱い方が雑だし、飲み終わってたみたいだ。

「ストレス軽減するのにハグがいいらしいよ」

椅子を回して私の方に体ごと向き直る。

「結構有名な話じゃない?それ」

実際に効果があるのかは知らないけど、よく聞く話ではある。

それが何なんだって話になる。

「知心はいつもチョコ食べてるじゃん」

「うん」

依存症に近いのは自覚してる。

「それがストレスから来ると仮定すれば、ストレスが軽くなればチョコの量減るってことだと思うんだよね」

「…はぁ」

つまり誰かとハグしたらいいんじゃないかってことか。

どうせハグするなら癒される相手がいい。

「ここまで言えばわかると思うんだけど」

優の話を聞きながら新しいチョコレートを開ける。

この甘い匂いが落ち着く。

「俺とハグしよ?」

「うん!?」

半分予想外の発言に思わず大きな声が出てしまう。

目の前でわざとらしく両手を広げている優の顔はニヤついていた。