題：ピアス

「ピアス？あけないよ？」

怖いしと付け加えて少し情けない顔で笑う。

「意外。そういうの好きそうなのに」

「イヤリングは好き」

開けるのが怖い、その理由で今まで欲しくなったデザインのものも諦めてきたらしい。

下手にイヤリングに加工するのもしたがらない。

「ほら私、不器用だからさ」

ちょっとだけ困ったように自虐的に笑う。

力の抜けるような笑顔。

この表情を拝めることは意外と少ない。

「じゃあ俺が代わりにあけようかな」

代わりも何も無いし、あける気もないけど。

知心はきょとんとしたあとに、思わず笑い出した。

「何それ、意味わかんないよ」

笑顔だけで何種類もあって、どれも愛おしい。

「代わりって」

俺の耳を触りながら呟く

触られた部分が熱い。

「嘘だよ」

「あけないよ」

そう言うと耳から手を離した。

「まあその方がいいんじゃない」

「無理にあけるものじゃないし」

さっきまで俺の耳を触ってた手は今は自分の耳元のイヤリングに移動していた。

なれた手つきで片方を外して俺の耳元にあてた。

「つけてみる？」

本人は結構真面目に聞いてるんだと思うけど。

「これ女物じゃん」

いくらなんでも女物はないだろ。

「んーまあそうなんだけどさあ」

さっきまでの笑顔はどこへやら。

じっと見つめてくる。

「あれだね」

「男物でも女物でも」

「似合わなさそう」

そしてニィっと笑った。