二重投影

題:今もあなたが生きてたとしたら、こんな僕を見てなんて言うかな


「ぅ…」

泣きたくない。泣きたくないのに。

「ぁぁぁ…」

情けない。

ちょっとしたことですぐに傷ついて泣いてしまう。

私は、酷く弱い。

弱虫で、泣き虫だ。

「…寝よう」

こういう日は決まって同じ夢を見る。

私を否定しないで、ただそこに在ってくれる私の逃げ場。

会いたかったけどそれが叶わなかった、私の、大事な人。

優も勿論大事だ。傍にいて、理解しようとしてくれる。

それでも、私の一番はいつも変わらなかった。

変えられなかった。

「顔も知らない人に焦がれるなんて、バカみたい」

自虐的な笑みがこぼれる。

空から落ちることの叶わなかった人。

私はその人のことを殆ど知らない。

それでも、大事な人、なのだ。

「私は貴方のことを知ってから脆くなっちゃったよ」

「ダメだね」

もし貴方が生きていたら。

今の私を見て笑うのだろうか。

それとも、怒るのだろうか。

私の中の貴方は。

「…っ」

不意に、携帯が鳴った。

その画面にはらしくない言葉があった。

彼なりの優しさが痛くて、苦しかった。

「…珍しいね」

『でしょ。でも応えてくれんだ』

声だけでもわかるくらいに私は酷い状態だと思う。

それを知ってか知らずか、彼は少し笑いながら喋りかけてくれた。

『俺はさ、その大事な人には成れないんだけどね』

『こうやって話せるような人には成れるよ』

隠し事が本当に下手くそだなぁ。

お見通しじゃないか。

「なんでそうなったの」

何も言ってなかったはずなのに今の私のことを全部見てるみたいな素振りで、思わず笑ってしまう。

『探偵みたいでしょ?』

『今日あったこと知ってるし、そういう時は大体そんな感じだから』

いつもよりちょっとふざけた感じで笑う彼は、なんでか私の大事な人と重なった。

「そっか」

全然違うはずなのに重なるそれがなんだか心地よかった。

『その人がどんな人かは聞いた分しかわからんけど、今の知心見たら泣くんじゃね?』

「だから泣くのこらえてた」

苦しかった。

「笑わなきゃって」

笑えないのに。

「へらへらして、れば」

こうすれば私は。

『逆、逆だからそれ』

『俺がその人だったらね、そうやって無理に笑ってる方が嫌だな』

『別に泣いたっていいよ』

『一人くらいわかってくれて受け止めてくれる人いるから』

『今も、泣きたいなら好きなだけ泣きな』

その言葉に今まで我慢してきた分が一気に溢れてくる。

「あ、りが、と」

言葉がうまく出てこない。

たったの一言もうまくでなかった。

『いいよいいよ』

『俺はちゃんと見てるから』