コンプレックス

題:八重歯


「あー…」

鏡の前で大きく口を開く。

存在を主張する八重歯が目につく。

そう、私のコンプレックス。

だってなんか強そうじゃん?

小さい頃から気になって仕方ない。

周りは可愛いとか言ってくれるけど、他でもない私が可愛いと思えないのだ。

笑ったらめちゃくちゃ目立つし、なんとなく八重歯=私になっている空気感も苦手だったりする。

八重歯って矯正でなんとかできるものなんだろうか。

でも矯正って高いよなー…。

「削りたい…」

世の中の八重歯の人はどうやってこれと付き合っているんだろう。

私が気にし過ぎなだけなんだろうか。

でも気になるものは気になるのだ。

こればっかりはどうしようもない。

せめてもう少し存在感が控えめなら良かったのに。

家族の誰も八重歯が目立ったりしていないのに私だけ目立つ。

昔はさほど気にならなかったけど、段々気になってくる。

テレビで話題のアイドルが八重歯を売りにして、偽物の八重歯を付ける人とか増えた時期もあったけど…。

思えば自分の八重歯コンプレックスはその頃からかもしれない。

自分も付け八重歯だと思われて、からかわれたのが嫌で嫌で仕方なかった。

それ以来自分の八重歯が嫌いになった。

いつか気にならなくなる日がくるんだろうか。

あー、そんなこともあったねーなんて、笑える日が。