手を繋いで

題:君が眠るまでそばにいるから、


「ん…」

隣から小さな声が聞こえて、本から目を離す。

深夜一時を過ぎた頃だった。

「ああ、ごめん。眠い?」

「んー…最近寝れない…」

眠そうに目をこすりながらぬいぐるみを抱きしめた彼女は、確かに目の下に隈があった。

就活に課題に追われ始めて、睡眠時間を削っているのだろうか。

それともストレスかなにかだろうか。

「寝れなくても横になるくらいはしよっか」

本に栞を挟んで部屋の電気に手を伸ばそうとすると、手を掴まれた。

今にも寝そうなのに、どこか不安気な表情を浮かべている。

「いなくならないよ」

安心させるためにそういっても、うんとかんーとか生返事が返ってくるだけだった。

どうやら本格的に眠いらしい。

「電気消すだけだから、ね?」

子供に言い聞かせるように言ってようやく手を離してくれた。

そのままもそもそと布団に入ったのを確認して電気を消す。

隣の布団に入ろうとすると、そこには先客がいた。

「知心」

先客を置いた犯人の名前を呼ぶ。

夢の中に片足突っ込んでいる犯人は、ふわふわととろけた声で理由を話した。

「こわいゆめ、みるから」

「いっしょにいて」

つまり同じ布団で寝ろと。

俺も男なんだがなあ。

今夜は自制心が試されるのかもしれない。

「はいはい」

腹をくくって布団に入る。

知心の体温が伝わってきて、妙にドキドキした。

不安そうに服を掴んでくる手を握ると、安心したのか手から力が抜けた。

そのまま解かずにいると、寝息が聞こえてきた。

いくらなんでも、もう少し警戒はしてほしいが…。

他ならぬ知心のためならこのくらいの我慢はできる。

それはそれとして警戒心はあってほしいんだけどな。

俺以外のやつにこういうことしないならまあいいか…。

怖い夢を見るなら、落ち着いて眠れるまで傍にいてやるよ。