君の目

題:彼は瞳に宇宙を、彼女は瞳に深海を飼っている


男の割に大きめでぱっちりしていて、まつ毛も長い。

その癖、普段は少し目付きが悪くて気付きにくい。

きょとんとした時に大きめなんだってわかるくらいで。

深い黒色で、じっと見ていると飲み込まれそうになる。

私は彼のそんな目が好き。

何考えてるかはわかりにくいけど。

表情には全然でない癖に、彼の目は感情豊かだ。

目は口ほどに物を言う、とはよく言ったものだと思う。

見ていて飽きないくらいには面白いのだ。

ポーカーフェイスが上手いように見せかけて、実は下手くそなのがよくわかる。

彼は感情によって目線の動き方がかなり変わる。

普段話す時は相手の顔をしっかり見るほうだと思う。

だから私がたまに彼の顔を見ると必ずと言っていいほど目が合うのだ。

その度に恥ずかしくなって目を逸らしてしまう。

そんな私の様子を見て、彼の目は楽しそうに笑うのだ。

案外、Sっ気があると思う。

…でも、私のことを見ている彼の目は優しいものであることが多いことも知っている。

優しく、見つめているのだ。

そんな彼だから、私は今日も彼の目を見つめられない。

 

 *

 

本人は目付きが悪いと言うが、案外そうでもなくて、結構ぱっちりした目。

少し下向きだけど長いまつ毛。

奥二重も相まって大人びて見える。

本人が目付き悪いと思うのは、写真写りの関係だろう。

普段の彼女は明るい性格に合っているようなぱっちり開いた目をしている。

極端に大きな目、とは言えないが、少し大きめでくりっとしてると思う。

それこそ、なんで普段そんなに悩むのかがわからないくらいだ。

彼女は表情豊かで、何を考えているかなんて表情を見ればすぎにわかる。

対して彼女の目は感情の揺れ動きが少ない。

楽しそうに笑っている時も、辛そうな時も、目の奥にある感情は同じものに見える。

どこか無理をしていて、自分をも誤魔化している、そんな目をしていた。

その目を見る度に辛く、苦しくなる。

彼女は人と話す時にあまり相手の顔を見ないから目が合うことは少ないし、パッと合うと恥ずかしそうに目をそらす。

いつまで経っても慣れないのか、反応が初心だ。

ただ、その一瞬だけ、普段の苦しそうな目じゃないように見える。

その辛さが、苦しさが少しでも紛れるなら。

そう思って、俺は今日も作った笑顔に隠れた目を見つめる。