独白

題:意味も答えもない話をずっと君としていたい


「用事、用事かぁ…」

先名に話しかける時にいつも何か用事を探している。

本当は用事なんか無くてもしょうもない話をしていたい。

けどそれが負担になるのは怖い。

「うーん…」

付き合って間もないのもあるけど、私は先名のことをよく知らない。

誕生日も、好きなものも全然知らないんだ。

知りたいけど聞き方がわからない。

いや、変に気張らず気軽に聞けばいいのかもしれないけど…。

脈絡もなく聞くわけにも行かないし、話の流れってものがあるだろう。

「世の中のコミュニケーション強者はどうやってるんだろ…」

いつも思うが、一体どうやって情報を引きだしているんだろう。

今度友達に聞いてみるべきか。

いやでも私がそんなキャラじゃないな。

「その内色々話せるようになるのかなぁ…」

先名、寡黙なんだよなぁ…。

教科書みたいに手順があれば楽なのに。

…まぁ、啓発本みたいなのはごまんとあるか。

「うーわ」

話す口実を探していたらもう23時になってしまった。

 

明日は早番だから寝なきゃいけないし、この時間は迷惑極まりない。

やめだやめ、これはどうやっても今日話題を見つけられない。

所詮はコミュニケーション弱者、無理なものは無理だ。

大人しく布団と仲良くなろう。

「ずっとこの調子なのかなぁ…」

それはそれで寂しい気がする。

絶対ダメとは言わないけど、会話はしたい。

わがままなんだろうか。

静かな携帯を眺めながら一人考える。

私は先名とどうなりたいんだろう。

付き合ったから満足と言うわけではない。

願いが一つ叶えば欲が生まれる。

その欲をどうするかはその人次第だと思うけどさ。

先名はどうなんだろう。

何を思って私と付き合っているのか。

「…考えるだけ無駄か」

最後に出たのは、自分でもわかるくらいの情けない声だった。