深度

題:星を砕いて閉じ込めたような瞳


「…なんすか」

いきなり人の顔を掴んで来たと思えば何をするでもない。

勉強の邪魔をする気なのだろうか。

「知心ってさ、意外と目の色素濃いよね」

君はその私より濃いでしょ。

本当に何がしたいんだ。

「…何か目の周りキラキラしてない?」

「あー、今日ラメ入りの付けたから」

「ふーん」

聞いておきながら興味は無いのか。

まぁ化粧とか変えても気付かなさそうだもんね。

「コンタクトとかしないの?」

もう何度聞いただろうか。

眼鏡を掛けていると顔がよく見えないとか何とか適当に言ってコンタクトに変えて欲しそうにする。

「だから怖いんだって」

私にコンタクトを付けさせたいなら自分もコンタクトにして欲しい。

…私は眼鏡の方が好きだけど。

優がコンタクトになろうがならまいが好きなことに変わりはない。

ない、けど…それと好みは別の話だと思う。

「なら仕方ないか。でも眼鏡はあんまり掛けて欲しくない」

「何で?」

「目がよく見えないから」

そう言って私の眼鏡を外した。

確かに眼鏡は無くても見えるが、無いと視界は悪い訳で。

「…勉強中なんですけど」

私の抗議は虚しくもスルーされてしまった。

眼鏡がなくなって私の目が見やすくなったのか更に遠慮がなくなっていく。

近い。

顔が近い。

「大人しいね」

「そりゃまぁ…」

そんな悲しそうな顔で見られたら、抵抗もできないよ。

「知心って表情に出やすいと見せかけて、案外何考えてるかわからないんだよなあ」

何も考えてないだけなんだけど…。

考えてないというか、関心がないというか。

優は分からないって言うけど、私以上に私の感情に敏感だと思う。

「星みたいに近くにあると思ったら凄い遠くにあるみたいだ」

流石にそんな何億光年も先に私の感情は無いよ。

だからその悲痛な表情をやめてくれ。

「頼むから手の届く範囲にいてくれよ」

そう呟いて、手を離した。