夜、駅前にて

題:星屑


「もう、やだ…」

疲れた。

どうも私は副店長と相性が悪い。

店長の由紀さんは学校を優先させてくれるが、副店長はそうでもない。

資格試験があるからと休み希望を出せば嫌味を言われ、残業を命じられる。

流石にシフトを入れられた時は必死に抗議した。

今日も今日とて、来月の試験の為に残業することになった。

由紀さんがいない時にだけそういうことをするから後ろめたいことはあるのかもしれない。

「あ゛ー…ねっむ…」

店を出る10分前に終電は行ってしまった。

タクシーは学生でアルバイトの身分には高すぎる。

かと言って夜中の12時半に2時間近く歩いて帰るかと言われると後々怒られそうなので難しい。

「カラオケかネカフェか探すかぁ…」

確か駅前にあったはず。

たまに終電を逃すので慣れ始めている自分がいる。

今が夏休み中で本当に良かった。

学校がある日にやられた時は凄い辛かったのを覚えている。

結局しっかりと眠れないので疲れは取れないし、始発で一回家に帰ってシャワー浴びたり準備したりと忙しくなるのだ。

朝の時間に余裕を持てなくなるのは辛い。

「あ、流れ星」

地元ほどでは無いけど、案外星は見える。

辛い時に空を見るのはなんでだろうな。

別に涙がどうとかそんなことは考えてないんだけど。

「あー、金平糖食べたい」

流れ星を見るといつも思う。

見た目が星屑っぽくて可愛いとか、そういう理由もなくはないけど何よりも甘い物が欲しい。

正直買った時と開ける時しか見た目を楽しまないし。

「…知心?」

「げ」

駅に向かって歩いていると名前を呼ばれた。

そういえばこの辺に住んでたな。

「げってなんだよ」

反射で思わず出てしまった声を突っ込まれる。

呆れ返った顔をした優がそこに居た。

「まあいいか…こんな時間に何してんの?」

「いや…終電無いから…」

こればかりは仕方ないのだ。

歩いて帰ろうとしないだけ私にしては賢明な判断だと思う。

言いたいことが色々ありそうな顔をしているが、私の荷物から何かを察したのかそれ以上深くは追求してこなかった。

やましいことは一切無いので追求されても困らないのだが。

「あー…じゃあ、うちに泊まる?」

「えっ」

ありがたいけど何も用意をしていない。

そんな突然泊まっても大丈夫だろうか。

「どうせ母さん夜勤で居ないし、ネカフェよりマシでしょ」

迷惑にならないのだろうか。

本当にばったり遭遇しているので心苦しい。

「どうせ俺明日バイト無いし構わないから」

「…ありがとう」

優の家に向かう道で、もう一度流れ星を見た。