題:桜吹雪
新生活。
落ち着かない。
由紀さんは一緒に住もうと誘ってくれたけど、これ以上お世話になる訳にも行かない。
とは言え、一人暮らしをするために色々お世話になっているんだけどさ、
「これはもう足を向けて眠れないってやつですかねぇ…」
明日に控えた入学式の用意をしながらしょうもないことを考える。
高校を卒業して、一人暮らしを始めて。
慣れる間もなく明日は入学式で。
「…体壊しそー」
絶対一回は病院に行く羽目になるなぁ。
クラス制だって聞いたけど、うまくやっていけるんだろうか。
なんだかんだ高校生活では恵まれていたからそれ以外でうまくやる自信がない。
「散歩でもしてこよっと」
気分転換、大事。
やることから逃げてるとも言えるんだけど。
*
「もう桜咲いてるんだ」
高校の時から思っていたけど、この辺りは桜咲くの早いなぁ。
地元はまだ一ヶ月くらい先の話だっていうのに。
公園ではしゃいでいる子供を視界の端にとらえながら先へ進んでいく。
どこまで行くとか何も考えてなかったけど、春の陽気を感じているのは気持ちが良い。
そういえばこの先に桜がたくさん咲いている場所があるんだったかな。
ちょっと行ってみようかな。
「う、わっ」
突然吹いた風に思わず目をつむる。
そっと目を開けると、桜の花びらが空に舞っていた。
「おわぁ…」
綺麗だな。
これなら桜並木を歩くのは楽しそうだ。
きっと足元も桜のカーペットが敷き詰められていて、視界全部が桜に染まってそうだ。
あ、でも人も多いかな。
人混みは好きじゃないからなぁ。
どうしたもんかな。
桜は見たいけど人混みには行きたくない…。
地元民ではないから穴場とかも知らないし…。
「はぁ…」
諦めることにしよう。
明日は入学式だし、さっさと用意しておかなきゃいけないし。
慣れないスーツとパンプスだ、絶対足が痛くなる。
そう考えると憂鬱になるが、視界に広がる桜が気持ちを少し前向きにさせてくれた。