あなたの横顔

題:横顔


私が好きな人の顔を浮かべる時、真っ先に浮かぶのは横顔だけで。

それは好きになった、と自覚した頃からだったと思う。

今は横にいることが多いからっていうのもあるんだけど。

目が合うと恥ずかしいからしっかりと顔を見れないのが大きい。

「なしたの」

「え?」

お互いに無言で、ただ横にいてそれぞれがそれぞれの時間を過ごしていた。

その静寂を破るのはいつも私なのに。

「そんなにこっち見られると恥ずかしいんだけど」

そういって困ったような、照れたような笑顔を浮かべる。

その表情一つで私の心臓は酷くうるさくなる。

「いやぁ、かっこいいなーって思って」

笑いながら茶化すように。

我ながらこんな恥ずかしい台詞をよく言えると思う。

実際、格好いいと見惚れていたのもあながち間違いでもない。

気が付けば目で追ってしまっている。

わかりやすい奴だな、と自分でも思ってる。

「なにそれ、なんか照れるんだけど」

耳を赤くしてさっきよりも照れくさそうに笑うあなたは、可愛いと思う。

可愛いっていったらちょっと拗ねるから言わないけど。

「まぁいいけどさぁ」

まだ恥ずかしいのだろう。

手で顔を仰ぎながら諦めたように呟く。

「結構俺のこと見てるよね」

「えっ」

私はきっと、きょとん、とした表情をしているだろう。

その一言があまりにも意外だった。

そんなにバレバレだっただろうか。

でも頻りに見てるわけじゃないはず。

「そうでもないよ、うん」

喋りかける時とかは相手の様子を見たりはするけど。

本当に何も無い時は見ないことが殆どだと思う。

「そう?」

「そう」

その返事に納得したのか、また自分の世界に没頭し始めた。

いつも誤魔化してしまう。

気付いているのかいないのか、無理に聞き出そうとはしない。

その距離感が心地いい。

一緒にいる時は癒されるとか、そういうのではないと思う。

ただ、安心する。

それほどまでに私の中では大きな存在なのだ。

あなたは知らないだろうけど。

「ほら、また」

目線だけをこっちに向けて笑いながらいう。

「話してる時と考え事してる時にこっち見るよね」

話してる時はわかるけど、と付け加えながら無邪気に笑う。

「話してる時はともかく、考え事してる時は見てないと思うなぁ」

考え事してる時のことを振り返っても見てないと思う。

うん、見てない。

「無意識なんじゃない?穴あきそうなくらい見られてるけど」

目が合ったら考え事してても気付くような気もする。

「別にいいけど俺の顔見てても考えはまとまんないだろ」

いや、仮に見てたとしても、それになんで気付いてるのか。

視線を感じる、とかじゃなさそう。

というか気付かなさそう。

「なんででしょーね」

内緒、とでも言わんばかりの顔だった。

でもその横顔から覗く頬も耳も真っ赤で。

もしかして、ね。