雪と靴

題:白銀


「積もったねぇ」

「積もりましたねえ」

朝日が反射して外が眩しい。

視界を白銀に染めるそれは、冬の訪れを示していた。

「更に冷え込むの嫌だなぁ」

「寒がりだもんね」

「そうなんですよー」

雪に心躍らなくなったのはいつからだろうか。

隣を歩く彼女も心無しか元気がない。

…彼女の場合、寒がりだからかもしれないが。

この時期は辛いと以前から言っていたし、この先更に冷え込むことを考えると気が滅入ってしまうのだろう。

それならもう少し厚着をすればいいのに…と思わなくもないが、どうも彼女のポリシーに反するらしい。

寒さに耐えながらお洒落をしても、体調を崩してしまったら元も子もないんじゃないか。

そう思っても口には出さないでおく。

下手に機嫌を損ねても面倒くさいし、お洒落をしたい気持ちが全くわからないわけでもない。

俺は機能性を取っているが、それでも最低限は気にしているし。

「まあ室内は暖房効いてるだろうからさっさと行こう」

「はーい」

踏み固められた雪道を歩く。

所々雪が積もったまま残っているので少しでも横道に逸れたら靴の中に入りそうだなーなんて考えていたら隣から小さい悲鳴が聞こえた。

「冷たっ」

思った矢先に靴の中に雪が入ったようだ。

期待を裏切らないというかなんというか…。

「ほら、肩貸すから雪ほろいな」

内心呆れつつ、バランスを崩して二次被害が生まれるのを防ぐ。

口を尖らせて拗ねる姿が可愛らしい。

「タイツちょっと濡れた…」

「さっさと教室行って靴脱いでたらいいんじゃない?」

「それもそうだね」