まくら

題:眠れない


「あー…」

眠い。

睡眠時間が足りなすぎる。

「呻き声凄いね」

知心が俺の顔を覗き込みながら困ったように笑う。

「ねみーんだよ…」

バイトは忙しいわ課題は増えるわでもうやってらんねえ。

久々にバイトが休みだけど結局溜まった課題があって休めない。

「授業寝るくらいならバイト減らしなよ」

「出来たらこうなってねえよ…」

頭が回らない。

言葉を選ぶ気力すら残っていない。

知心の言ってることは尤もだって分かってる。

学生の本分を疎かにしてまでバイトに精を出す必要はない。

「今日はもう帰って寝たら?」

「まだこれ終わってねえし」

期限が近いものは終わらせておかないと間に合わなくなりそうだ。

今やってもギリギリなのに、睡眠時間に費やす余裕はないのに。

「そんな状態でやっても再提出になると思うよ」

「うっ」

広げていた課題を仕舞いながら冷たい目線を向けてくる。

「鏡見ておいで、酷い顔してるから」

そんなことは言われなくても分かっていた。

「起こしてあげるからちゃんと寝て」

「電話じゃ起きれる気がしない」

「だったらうちに来たらいいじゃん」

近いし、と平然とした顔で言う彼女は自分の言っていることの意味が分かっているんだろうか。

「何その顔」

俺としたことが表情が表に出すぎていたみたいだ。

「いや、警戒心が相変わらず無いなって」

そう言うと知心がピタッと止まった。

俺だから良いとか言わないでくれよ。

「へーえ」

あー悪い顔。

何に対抗心を燃やしたんだ。

じゃあいい!とか拗ねるのかな。

「せっかく膝枕してやろうと思ったのに」

「行く」

俺の返事に知心は満足そうに笑っていた。

…良く眠れたとだけ言っておこう。