題:金平糖に夢を見る
「なつかしー」
バイト先の店長がくれたキラキラの甘い夢…もとい金平糖を眺めながらつぶやく。
砂糖の塊なんだろうけど、見た目がとにかく好きだ。
食べる分には甘くて時間がかかるけど。
カラフルなそれが瓶の中で輝いて見える。
小さい頃はこういった感じでお洒落に梱包された金平糖は魔法使いが作ってると思ってたなぁ。
実際はそんなことないんだけど、ほんの少し、少しだけ夢を見てしまう。
なんとなく、特別なものな感じがして一粒食べるたびに願い事をしている。
流れ星じゃないんだから、と笑う兄の顔が思い浮かんだ。
兄がくれる夢はいつも素敵だった。
金平糖を食べながら、兄の話を聞くのが好きだった。
今はもう聞けなくても、思い出すくらいならできるんだ。
将来何になりたいとか、どんなことをしたいとか。
他愛もない話をしながら散歩をして。
懐かしいなぁ。
あの頃に思い馳せながら、変わらない味を口に含む。
「あっま」
当時ほど心躍らないけど、この味と当時の記憶を結びつけていく。
そうして、金平糖を食べるたびに兄のことを思い出すのだ。
私の、幸せな記憶を、夢を、カラフルな砂糖の塊に詰め込んで。