スカート

題:雪の日


「さっむ!」

思わず口に出してしまうほど、外は寒い。

目の前に広がる銀世界。

気温も、見た目も寒く染まっている。

雪が降って喜ぶのは子供と犬くらいだろうか。

もう心躍るような年齢でもなくなってしまった。

ふぅ、と白い息を吐く。

憂鬱な気分に浸りながら学校への道を歩く。

すれ違う小学生は楽しそうに雪で遊んでいた。

「元気だなぁ…」

自分にもあんな頃があっただろうか。

外で遊ぶことは多かったけど、あそこまではしゃいでた記憶はない。

今思えば、あの頃から純粋に楽しむ心は無かったのかもしれない。

朝から暗い考えが堂々巡りしている。

「おはよ」

ぽん、と肩を叩きながら声をかけられた。

さっきまでのどうでもいい考えは一瞬にして消えてしまった。

「…優。おはよ」

挨拶の相手…優に返事をすると少し満足そうに笑った。

家の方向は逆だし、何でいるのかはわからないけど深く詮索しない方がいいのかもしれない。

全く気にならない訳では無いし、むしろかなり気になるけど。

「…スカートなんだ」

私の服装を見て少し不満そうに呟く。

「転ばないでよ」

見えそうだし、と付け加えて軽く唇を尖らせる。

心なしか顔が赤いのはきっと寒いからだろう。

「んー、でも下タイツだし見えないよ」

ストッキングならまだしも、タイツだと案外見えないものだ。

「そういう問題じゃないんだよなぁ…」

呆れ顔でため息をつく。

忙しなく変わる表情を見て、ちょっと可愛いと思ってしまった。

「そういう状況になると見える見えないは関係なくて…」

言葉選びが上手くいかないのか、言い淀んでしまった。

かと言って今私が何か言っても火に油を注ぐようなものだろう。

「とにかく!」

どうしようかと考えていたら突然声を張り上げた。 

「俺だけじゃないんだからさ」

優の顔を見るとさっきよりも赤くなっていた。

寒さだけではなさそうな朱。

「その…あんまり無防備な所見せないでよ」

あぁ、そういう事か。

やっと合点がいった。

「他の人に見られるかもって思うと…こう…」

そういう意図がなくてもそう見えてしまうのは仕方ないのかもしれない。

次からはもう少し考えなきゃな。

…ただ、滅多に見れない優の百面相と嫉妬みたいなものが見れたからたまにはいいかな。