題:魔法
「魔法の世界、だって」
新作ゲームのニュースを見ながら思わず呟いた。
「まぁ、ファンタジーあるあるだよね」
現実には存在しないからこそ、需要も高いのかもしれない。
空想の中でくらい、現実から逃げていたい。
「最近は同じようなのばっかりでダメ」
昔みたいに心が躍らない。
楽しむ余裕がなくなったからなのかどうかは、今はもうわからなかった。
ただ、魔法に心躍ることは少なくなった。
「最近のゲームだと知心は無理そうだね」
優がクスクスと笑う。
ゲームは嫌いじゃないんだけどなぁ。
「でもやっぱ、使えたらいいなーって思うわけよ」
ロマンだよ、と軽く拳を握りしめる。
優もこういうのが好きなのかぁ。
ロボとかの方が好きそうな気もするけど。
「どんなの使えたらいいの?」
「うーん、やっぱり火を出したりとか憧れるかな」
しょうもない質問でも、素直に答えてくれた。
使う機会はないだろうけど、と笑う横顔が眩しい。
「知心は?どんな魔法使ってみたい?」
「うーん」
もし使えたら、なんてもうずっと考えなかった。
考えないようにしてた。
それでも、もしを思うなら。
「花」
ポロっと零れた言葉だった。
「花を咲かせる魔法がいい」
「また限定的な。」
それは自分でも思うよ。
だけど。
「幼稚園くらいの頃、お花屋さんになりたかったの」
迷子になって泣いていた私の目に飛び込んだたくさんの色。
当時の私には、明るくて輝いていた。
「へぇ」
「本当だよ」
花が好きなのは今も変わらない。
花に囲まれた生活だってしてみたい。
「それが今では、ねぇ」
どうしてこうなったんだとでも言いたげな顔。
花と全く関係のない進路を選び続けたから、仕方ないだろう。
あぁ、そうだ。
「それかあれね」
もう純真無垢だったあの頃には戻れないけど。
「夢を魅せる魔法とか?」
せめて、あの頃の感動をもう1度味わいたいものだから。
夢の中でくらい許して欲しい。