渦を走る

題:魔法使いは永遠を巡る


俺は彼女にめっぽう甘いと思う。

頼まれ事は基本的に断れないし、断る気も無い。

「優って何か、御伽噺に出てくる魔法使いみたいだよね」

「…というと?」

「何て言えばいいのかな。私が欲しいと思う最適解をくれるから?かな?」

俺に聞かれてもそれは分からないんだが。

まあ最適解を出せるように必死だから当然なんだけど。

それに魔法使いは別に最適解を出す訳じゃないと思うんだがなあ。

「何かさー、自分で言ったこと覚えてないくらい些細な事でも覚えててくれるし」

そりゃあ聞き逃さないようにしてますし。

「ゲーセンとかで欲しい物あったら気付いたら取ってくるし」

そこまで欲しくなさそうな物は取らないけど。

「それが何か…面白くて」

「面白がってんのかよ」

嬉しいとかじゃないのか。

笑ってくれるなら構わないけどさ…。

「なんでそこまでしてくれるんだろうなぁって疑問なんだよ」

好きな人の為だからだよ。

照れ臭いから言わないけど。

知心の為にそんなに好きじゃない甘い物だって食べるようになった。

俺が甘い物を好きじゃないことは知ってるから意味は無いのかもしれないが。

「あ、ホットチョコ売ってる」

「飲む?…お姫様」

俺の言葉に知心は思いっきり吹き出した。

「何それ、私そんなキャラじゃないでしょ」

自分で言ってて虚しくないのか。

確かにお姫様と言う感じではないけども。

「俺が魔法使いなら知心はお姫様でしょ?」

まあお姫様だったら結ばれないんだがな。

俺は王子様じゃないし、ならないし。

…王子様にくれてやる気も無いので自分でもタチが悪いと思う。

まあ、知心がそれを望めば考えるけど、そうなったら俺は離れられるのだろうか。

多分無理だな。

ヤンデレだのなんだのと言われようがそれが俺な訳で。

「王子様はいないの?」

「さあ?」

いたとしても会わせてやんねえ。